【総まとめ】1Q決算ラッシュで見えた半導体セクターの共通パターン|TSMC・東京エレクトロン・アドバンテスト・キオクシア・JX金属・レーザーテックを検証

投資・企業決算

こんにちは、元上場企業の経理マネージャー「エクス」です。2026年7月〜8月にかけて、半導体バリューチェーンの主要企業が相次いで決算を発表しました。ファウンドリのTSMC、装置の東京エレクトロンとアドバンテスト、メモリーのキオクシア、素材のJX金属、検査装置のレーザーテックと、川上から川下まで見渡してみると、ある共通したパターンが浮かび上がってきます。それは「好決算=株価上昇」が必ずしも成り立たなかったという事実です。ただし全社が売られたわけではなく、明暗がくっきり分かれた点も興味深いところです。ガブガブっと、6社の決算と株価の動きを時系列でまとめて整理します。

1. 発端はTSMCの「好決算ショック」(7月16日)

すべての起点は、7月16日に発表されたTSMCの2026年4-6月期決算でした。売上高402億米ドル(前年同期比+36.0%、会社ガイダンス上限を達成)、純利益7,065億台湾ドル(同+77.4%、アナリスト予想を約11.7%上回る)、売上総利益率67.7%・営業利益率60.3%(いずれも会社ガイダンス上限を突破)と、内容自体は文句なしの好決算でした。

ところが、会社が同時に示した「2026年通期の設備投資額を前年比46%増へ引き上げる」というガイダンスが、市場の受け止め方を変えました。AI関連の需要拡大自体は好材料のはずですが、「これだけ巨額の投資を続けなければならないほど競争が激化している」「投資が先行しすぎて利益率が圧迫されるのでは」という警戒感が広がり、決算発表当日の米国市場でTSMC株は2%超下落。NVIDIAなど米半導体株も軒並み売られ、翌7月17日の東京市場でも東京エレクトロンが一時8%超安、アドバンテストが10%超安、キオクシアが一時ストップ安(15%超安)となるなど、半導体株の急落が世界に連鎖しました。

この「TSMCショック」が、その後1カ月にわたる半導体セクター全体の乱高下の出発点になったと言えます。

2. 東京エレクトロン(8035)|急落からの反発というパターン

東京エレクトロンは、この連鎖の影響をもろに受けた銘柄のひとつです。決算発表前の7月28〜29日には、株価が2日連続で1割前後急落し、一時5万円割れ寸前まで売られました。

そんな中、7月30日に発表された2027年3月期1Q決算は、売上高7,324億円(前年同期比+33.3%)、営業利益2,114億円(同+46.1%)、経常利益2,156億円(同+46.3%)、純利益1,643億円(同+39.5%)という大幅増収増益。あわせて中間期の業績予想も上方修正され、中間配当も361円から384円へ増額されました。

決算発表当日の株価は前日比+4.48%の5万2,240円で終え、翌31日にも一段高となる場面が見られました。東京エレクトロンのケースは、「決算前にすでに株価が大きく調整していたため、好決算がその戻りを後押しした」という、今回の6社の中では珍しい素直な反応となったパターンです。

3. アドバンテスト(6857)|コンセンサスを大きく超える上方修正で急伸

同じ半導体製造装置セクターでも、アドバンテストは対照的な結果になりました。7月29日に発表された2027年3月期1Q決算は、売上高3,675億円(前年同期比+39.3%)、営業利益1,900億円(同+53.3%)、純利益1,748億円(同+93.8%)と、いずれも四半期ベースで過去最高を更新。売上高営業利益率も47.0%→51.7%へ改善しました。

さらに会社は、通期の純利益予想を従来の4,655億円から6,600億円へ、41.8%という大幅な上方修正を行いました。この修正後の水準は、事前の市場コンセンサス(純利益で概ね5,000億円台後半〜6,000億円程度、営業利益で6,900億円程度とみられていた水準)を明確に上回るものでした。実際、1Q単体の営業利益(1,900億円)自体も、市場予想の1,550億円程度を大幅に超える着地だったと報じられています。

株価は決算翌営業日の7月30日に+10.85%、さらに翌31日には+16.34%と、2日連続で大幅高となりました。決算発表後の3日間で複数の証券会社が目標株価を3万8,500円、4万円、4万5,000円、5万5,200円へと相次いで引き上げるなど、評価の見直しが急速に進みました。同じ半導体製造装置株でも、東京エレクトロンが「事前の急落からの反発」だったのに対し、アドバンテストは「市場予想を明確に超える上方修正そのもの」が買い材料になったという違いがあります。

4. キオクシア(285A)|異次元の増益でも「乱高下」

キオクシアの株価は、そもそも決算前から極端な値動きを見せていました。2026年1月に1万円台だった株価が、生成AI向けメモリー需要への期待から6月には一時11万円台まで急騰。その後7月に入ると一転して急落し、決算発表前日(7月29日)の終値は3万8,380円と、6月の高値から3分の1近い水準まで沈んでいました。

そうした中、7月31日に発表された2027年3月期1Q決算は、売上収益1兆7,671億円(前年同期比+415.5%)、営業利益1兆2,700億円(前年同期449億円から急拡大)、純利益8,422億円(前年同期比+4,506%)という、桁違いの増益となりました。売上収益・営業利益はいずれも過去最高を更新しています。ただし、これは5月に会社自身が示した非常に強気なガイダンス(純利益8,690億円)をわずかに下回る着地でもありました。あわせて、最大8,000億円の自己株式取得と、1株を3株にする株式分割も発表しています。

株価の反応は「乱高下」の一言に尽きます。決算翌営業日(8月3日)は売り買いが交錯する荒い値動きとなり、最終的には自己株式取得・株式分割の発表が好感され上昇して終える場面もありましたが、その後8月6日には前日比▲10.24%、8月7日も続落と、方向感の定まらない展開が続きました。「業績の伸び自体は圧倒的だが、事前の期待値と株価の変動幅がそれ以上に大きい」という、今回のセクターの中でも特に極端な値動きになったケースです。

5. JX金属(5016)|好決算・上方修正でも続落

JX金属も、同じパターンをたどりました。8月6日に発表された2027年3月期1Q決算は、売上高2,606億円(前年同期比+36.2%)、営業利益814億円(同+175.5%)、純利益531億円(同+181.3%)という大幅増収増益。銅価格の上昇と円安に加え、保有する銅鉱山持分の一部譲渡益も利益を押し上げました。

これを受けて会社は通期の純利益予想を1,140億円から1,410億円へ、23.7%も上方修正しました。それでもなお、事前のアナリスト予想平均(QUICKコンセンサス1,586億7,100万円)には11.1%届かない水準です。

株価は決算発表当日(8月6日)の時点ですでに前日比▲4.78%の4,142円と反落しており、翌8月7日にはさらに▲6.18%の3,886円まで下落しました。好決算・大幅増益・通期上方修正という3拍子がそろっても、「市場コンセンサスに届かない」という一点で株価が売られる、典型的なケースだったと言えます。

6. レーザーテック(6920)|期待先行の反動で決算翌日▲13.55%

レーザーテックは会計年度が6月末締めのため、他の5社より一足早く「本決算」というかたちで通期の着地を迎えます。8月6日に発表された2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)の実績は、売上高2,304億85百万円(前期比▲8.3%)、営業利益1,052億59百万円(同▲14.3%)、純利益774億85百万円(同▲8.5%)と、10期ぶりの減収減益。純利益はQUICKコンセンサス(776億9,000万円)にもわずかに届きませんでした。前期の受注低迷の反動が今期の売上に遅れて表れた形です。

一方で、受注高は2,375億円(前期比+125.7%、約2.3倍)と急回復しており、会社は2027年6月期の業績予想として売上高2,900億円(+25.8%)、営業利益1,250億円(+18.8%)、純利益900億円(+16.2%)という、増収増益への回復シナリオを示しました。

株価の動きが象徴的です。決算発表を前に、期待先行で株価は4営業日で+38.8%も上昇していました。ところが、実際に減収減益という結果が示されると、決算翌営業日(8月7日)の株価は▲13.55%と急落し、事前に積み上がった上昇分をわずか2日でほぼ全て吐き出す展開になりました。来期の増収増益計画自体は前向きな内容でしたが、その水準が市場が期待していたほどではなかったとみられ、「期待で買われ、実績で売られる」という、今回のセクターの中でも特にわかりやすい値動きになったケースです。

7. 6社に共通する教訓

6社の決算と株価の動きを並べてみると、いくつかの共通点、そして明暗を分けた要因が見えてきます。

① 決算の絶対的な良し悪しより、事前の期待値とのギャップが株価を左右する 今回取り上げた6社のうち、TSMC・キオクシア・JX金属・レーザーテックの4社は、内容自体は増収増益(レーザーテックのみ実績は減収減益だが来期は増益計画)にもかかわらず決算後に株価が下落しました。共通しているのは、決算発表前の株価にすでに高い成長期待が織り込まれていたことです。東京エレクトロンとレーザーテックは、決算前に株価が急落・急騰していた分、その反動が決算後の値動きにそのまま表れました。

② コンセンサス(市場予想)との比較が明暗を分けた最大の要因 今回最もわかりやすい対比が、同じ半導体製造装置セクターのアドバンテストとJX金属・レーザーテックです。アドバンテストは、通期予想の上方修正幅が市場コンセンサスを明確に上回ったことで株価が2日連続の大幅高になりました。一方、JX金属は通期予想を23.7%も上方修正しながらコンセンサスに届かず続落、レーザーテックも来期増益計画を示しながらコンセンサス未達で急落しています。「上方修正したかどうか」ではなく、「市場予想を超えたかどうか」が株価の分かれ目になっていることがよくわかります。

③ 設備投資額の拡大は諸刃の剣 TSMCのケースでは、需要拡大そのものより「その需要にどれだけの投資が必要なのか」という設備投資計画の規模が、市場の不安を招くきっかけになりました。好決算のニュースに接した際は、投資計画の拡大が将来の収益性にどう影響するかもあわせて考える必要があります。

④ 為替・金利など外部環境の影響も無視できない JX金属のケースでは、決算内容そのものとは別に、米長期金利の動向や中東情勢への警戒感といったマクロ要因が株価の重荷になった面もありました。個別企業の決算を評価する際も、その日の市場全体の地合いを切り離して考えることは難しいという点は覚えておきたいところです。

まとめ|投資家への視点

今回の決算シーズンを振り返ると、半導体バリューチェーン全体が「業績は間違いなく拡大しているが、株価の織り込みも同時に進みすぎていた」という状態にあったことがうかがえます。TSMCの好決算が皮肉にも世界的な半導体株安の引き金になったように、AI関連の成長ストーリーが強ければ強いほど、決算に対する市場のハードルも上がっていくという構図です。

一方で、アドバンテストのように「市場予想を明確に超える上方修正」を出せた銘柄は、素直に株価が評価された点も見逃せません。好決算でも売られる銘柄と、素直に買われる銘柄の違いは、突き詰めれば「市場が織り込んでいた期待値を、実際にどれだけ超えられたか」というただ一点に集約されると言えそうです。

投資家としては、決算の数字そのものだけでなく、①発表前にどれだけ期待(株価)が積み上がっていたか、②市場コンセンサスとの相対比較、③設備投資計画が将来の収益性に与える影響、④為替・金利といった外部環境、という4つの視点を組み合わせて評価することが、この乱高下の激しい相場を読み解くうえで欠かせないと言えるでしょう。

※本記事は開示情報に基づく分析であり、投資判断は自己責任でお願いします。株価情報は各社の決算発表後、直近で確認できた時点のものです。

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