TSMC(2330/TSM)決算速報|2026年4-6月期はガイダンス全項目を上振れ、株価の注目点を解説

投資・企業決算

こんにちは、元上場企業の経理マネージャー「エクス」です。本日2026年7月16日、TSMC(台湾積体電路製造)が2026年4-6月期(第2四半期)決算を発表しました。数字がかなり強かったので、ガブガブっと噛み砕いて解説します。

1. 本日発表された決算実績(2026年4-6月期、TIFRS基準)

TSMCが公表した連結財務諸表(Unaudited)の実績はこちらです。単位は新台湾ドル(NTD)、参考として米ドル(USD)も併記します。

  • 売上高:1兆2,703億8,100万台湾ドル(約402億米ドル)前四半期比+12.0%、前年同期比+36.0%
  • 売上総利益:8,603億1,100万台湾ドル(売上総利益率67.7%)
  • 営業利益:7,666億300万台湾ドル(営業利益率60.3%)
  • 税引前利益:8,624億3,000万台湾ドル(税引前利益率67.9%)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益:7,065億6,200万台湾ドル(純利益率55.6%)前四半期比+23.4%、前年同期比+77.4%
  • 希薄化後EPS:27.25台湾ドル/ADR1口当たり4.31米ドル(ADR1口=普通株5株)

まず押さえておきたいのは、この数字が「会社自身が4月に示したガイダンス」をすべての項目で上回っているという点です。

項目会社ガイダンス(4月時点)実績
売上高390億〜402億米ドル402億米ドル(上限到達)
売上総利益率65.5%〜67.5%67.7%(上限突破)
営業利益率56.5%〜58.5%60.3%(上限を1.8ポイント突破)

さらに、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)がまとめたアナリスト18人の事前予想(純利益6,326億台湾ドル)に対しても、実績の7,065億6,200万台湾ドルは約11.7%の上振れとなりました。会社ガイダンスもアナリスト予想も、両方をきっちり超えてきた決算だったということです。

上半期(2026年1-6月)累計では、売上高2兆4,044億8,400万台湾ドル(前年同期比+35.6%)、親会社株主帰属当期純利益1兆2,790億4,200万台湾ドル(同+68.3%)となっています。

2. 財務4大指標の検証(株価419.48米ドル=2026年7月15日終値・決算発表前終値ベース)

決算はまだ市場の株価に完全には織り込まれていないため、基準となる株価は決算発表前日(2026年7月15日)のNYSE終値419.48ドル(TSM ADR)を使います。計算根拠も示しますので確認してみてください。

PER(株価収益率)=株価 ÷ 1株当たり利益(年換算) 今回の四半期EPS(ADR)4.31ドルを単純に4倍して年換算すると17.24ドル。 419.48ドル ÷ 17.24ドル ≒ 24.3倍 ※四半期業績が急拡大している局面での単純年換算のため、実際の直近12カ月合計(TTM)ベースとはやや異なる参考値です。

PBR(株価純資産倍率)=株価 ÷ 1株当たり純資産 親会社株主に帰属する持分6兆4,325億1,800万台湾ドル÷発行済株式数259億3,300万株=1株当たり248.06台湾ドル。ADR1口(5株)換算で1,240.32台湾ドル。期末為替レート(1米ドル=31.918台湾ドル)で米ドル換算すると38.87ドル。 419.48ドル ÷ 38.87ドル ≒ 10.8倍

ROE(自己資本利益率)=当期純利益 ÷ 自己資本(期首・期末平均)、四半期→年換算 親会社株主帰属当期純利益7,065億6,200万台湾ドル ÷{(5兆8,909億6,000万台湾ドル+6兆4,325億1,800万台湾ドル)÷2}=11.47%(四半期) 年換算(×4):約45.9%

ROA(総資産利益率)=当期純利益 ÷ 総資産(期首・期末平均)、四半期→年換算 純利益7,067億8,100万台湾ドル ÷{(8兆6,609億5,000万台湾ドル+9兆3,756億5,500万台湾ドル)÷2}=7.84%(四半期) 年換算(×4):約31.4%

この数字、東京エレクトロンやキオクシアと並べてみると面白い対比になります。ROE・ROAの高さ(年換算45.9%・31.4%)は両社に引けを取らないレベルですが、PER24.3倍・PBR10.8倍という株価水準は、東京エレクトロン(PER58倍・PBR16倍)やキオクシア(PER67.5倍・PBR27倍)よりもかなり抑えめです。時価総額が既に2兆米ドルを超える超大型株であることに加えて、TSMCの利益成長は「一時的なメモリー市況の反転」ではなく「AI半導体という構造的な需要拡大」を背景にしているため、市場が相対的に落ち着いた倍率で評価している、と読むことができます。

3. ビジネスの強みと財務特性|なぜ利益が出るのか

① 圧倒的な先端プロセスの独占的地位 TSMCは世界のファウンドリ(半導体受託製造)市場で約7割超のシェアを持ち、特にNVIDIAやAMD、Appleなどが設計するAI向け先端半導体の製造をほぼ一手に引き受けています。3nmプロセスは事実上「完売」状態で、先端パッケージング技術「CoWoS」のリードタイムは1年以上にまで延びていると報じられています。価格交渉力が非常に強いため、需要が旺盛な局面では値上げ効果がそのまま利益率の改善に直結します。実際、今回の売上総利益率67.7%・営業利益率60.3%は、いずれも会社自身のガイダンス上限を上回る水準でした。

② 極めて厚い自己資本と低い財務レバレッジ 2026年6月末時点の自己資本比率(親会社株主帰属持分÷総資産)は68.6%。負債はわずか30.9%にとどまっており、東京エレクトロンやキオクシア以上に保守的なバランスシートです。現金及び現金同等物も3兆1,342億台湾ドル(総資産の33.4%)と潤沢で、毎四半期数千億台湾ドル規模の設備投資(今回の四半期だけで約4,960億台湾ドル、約155億米ドル)を自己資金でまかなえる体力があります。

③ 稼いだキャッシュを再投資に回す明確な資本配分 今四半期の営業キャッシュフローは7,833億6,500万台湾ドル。これに対し投資キャッシュフロー(主に設備投資)は4,928億1,000万台湾ドルの支出で、依然として営業CFの範囲内に収まっています。2026年通期の設備投資計画は520億〜560億米ドルとされており、前四半期比で投資ペースが加速している(1-3月期の約111億ドルから4-6月期は約155億ドルへ)点は、経営陣がAI需要の持続性に自信を持っていることの表れと解釈できます。

4. リスク分析

  • 地政学リスク:台湾に生産が集中しているため、台湾海峡を巡る地政学的緊張は、この会社にとって構造的なリスクです。米国アリゾナ州などへの海外展開も進めていますが、海外拠点はコスト高で当面は粗利益率を2〜3ポイント押し下げる要因になるとされています。
  • 需要の遅行指標であるという構造的な特性:TSMCの売上は、顧客(ハイパースケーラーなど)の設備投資判断から1〜3四半期遅れて計上される「遅行指標」です。仮に大手クラウド事業者の設備投資が今夏から鈍化し始めても、TSMCの決算にその影響が表れるのは年末頃になる可能性があり、「今回好調だったから今後も安心」とは単純に言えない点に注意が必要です。
  • バリュエーションと期待の高さ:市場の期待はすでにかなり高い水準にあり、外資系証券の目標株価は最大3,800台湾ドル(現在の株価の5割超の上値余地)まで出ています。今回のように好決算でも、次の四半期見通しが「市場予想並み」にとどまった場合は「材料出尽くし」による株価反落のリスクがあります。
  • 為替リスク:売上の大半が米ドル建てである一方、コストの多くは台湾ドル建てであるため、為替(USD/TWD)の変動が業績に影響します。
  • 技術遅延・歩留まりリスク:2nmプロセスの量産が始まったばかりで、歩留まりの改善ペースが計画から遅れると、粗利益率の押し下げ要因が長期化する可能性があります。

5. 今後の株価への注目点

決算発表前日(7月15日)の終値は419.48ドルでしたが、決算内容が好調だったことを受けて、発表後のプレマーケット(時間外取引)では426〜433ドル近辺まで上昇する場面が観測されています。ただしこれはあくまで時間外の気配値であり、正式な取引時間中の株価反応(本日7月16日のNYSE通常取引)を待つ必要があります。

今後、特に注目したいポイントは次の3つです。

  1. 第3四半期(7-9月)の売上高ガイダンス:外資系証券は前四半期比10〜15%増(約1兆4,000億〜1兆4,500億台湾ドル)という強気な水準を予想しています。会社が示す実際のガイダンスがこれを上回るか、あるいは市場予想並みにとどまるかで、株価の反応は大きく変わってきます。
  2. 通期(2026年)売上高成長率ガイダンスの上方修正の有無:現状の会社計画は「米ドルベースで30%超」。これがさらに引き上げられれば、AI設備投資サイクルにまだ伸び代があるという明確なシグナルになります。
  3. 2026年設備投資計画(現行520億〜560億米ドル)の上方修正の有無:投資額が上限を超えて引き上げられた場合、TSMC自身が中長期のAI半導体需要に対して自己資金をさらに投じる意思表示となり、半導体セクター全体への強気材料になり得ます。

なお、本記事は決算発表当日に開示された財務諸表の実績値に基づいています。決算説明会での経営陣コメントや第3四半期・通期ガイダンスの具体的な数値については、続報が入り次第、正式な発表内容で改めて確認することをおすすめします。

※本記事は開示情報に基づく分析であり、投資判断は自己責任でお願いします。株価情報は2026年7月15日(決算発表前)のNYSE終値時点のものです。

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