レーザーテックの株価が2年で10倍!すごいんだけど、どんな会社?
投資を始めるなら、企業決算を決算資料を実務で作っていた経理の目線で見てみよう。
第2弾は「レーザーテック」
レーザーテック?
すでに投資をしている方であれば、ご存知の方も多いかと思います。
一方でご存じない方も今回の情報である程度どういう会社なのか。
一緒に見て参りたいと思います。
それでは参りましょう‼
レーザーテック(2021年6月現在)
創業 1960年
資本金 9億3,100万円
時価総額 約 2兆1,000億円(サイバーエージェントの約2倍)
直近3年間の株価です。2年前から約2倍!とかなり上昇している銘柄になっております。
事業内容
下記製品の開発・製造・販売・サービス
- 半導体関連装置
- FPD関連装置
- レーザー顕微鏡
となっております。
事業内容としては、主に機械装置関係の開発からサービスまで一貫して提供している会社であることが分かります。
とは言っても専門分野でない人からみると、何をしている会社なのか分かりづらいと思いますので、決算資料をもとにどのような会社か見て参りましょう。
半導体の関連装置で唯一無二の存在!?マスクブランクス検査装置でシェア独占
ん??
また専門用語が出てきました「マスクブランクス検査装置」
専門性が高い分野の場合あるあるですね。
「半導体」は、スマートフォン、パソコン、テレビ、ゲーム機、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、自動車、電車など、あらゆる日常生活の場面において使用されています。
さらにスマートフォンを筆頭にどんどん機械が高性能になっていますが、それらの製品が高性能になるに連れて巨大化しているわけではありません。(iPhoneは最近少しずつ大きくなっていますが)
これは、半導体がどんどん小さくなり、高性能になることで、実現しています。(半導体以外にもいろいろな電子機器の性能が上がっています)
上の図で、なんとなく、
マスクからウェハ、そして半導体デバイスになり、いろいろな電子機器に内蔵されているイメージがわかりますでしょうか。
では「マスクブランクス検査装置」とは何でしょうか。
次の図を見てみましょう。
②の「マスクブランクス」を検査するもののようです。
つまり、iPhoneを作るのにも、電気自動車を作るのにも、この「マスクブランクス」というのが必要なようです。
半導体は年々小さくなっているため、この「マスク」などが綺麗に作られないと、もともと想定していた性能が発揮できないようになってしまいます。
そのため、必ず検査機械を通して、機器に欠陥ないかを確認しているとのことです。
ではどの程度小さいものを検査しているのでしょうか。
ちっさ!!!!
びっくりしますね。大腸菌より小さく、インフルエンザウィルス並みの細かい欠陥を見つけることができるようです。
100億%人間には無理な作業を、科学の英知で実現しているってことです。
さらに、レーザーテックでは、下記の図のように半導体の製造にかかる様々な検査装置を導入することにより、「マスク」の製造に係る一貫したサービス提供を実施しているとのことです。
ここで、2021年2月に行われた決算説明会での岡林社長のコメントがこちらです。
このようなラインアップ、マスクブランクス製造、そしてマスクの製造、それから半導体デバイス、製造工程、このようなマスクブランクス、マスクが使われる全ての工程でトータルソリューションを提供しておりますのは、われわれ、世界で 1 社だけです。
レーザーテック社 「2021年6月期 第2四半期 決算説明会資料(QA含むスクリプト付)」より
これが、いまをときめくレーザーテック社が唯一無二の存在で圧倒的なシェアを独占している強みでした。
※半導体関連の専門家ではございませんため、とてもざっくりとした説明になっていること、何卒ご了承ください。
売上の伸びが350%!その裏に隠された秘密とは。
レーザーテックが何となく凄い技術とサービスを持っているのはなんとなく分かった。
では、それがどの様に数値に表れているか、直近の決算を見ていきましょう。
直近の3ヶ月決算の前年同期比が売上~利益まで素晴らしい伸びとなっております。
また、半導体の売上が大きく伸びていることが分かります。
ただ一つ疑問に思いませんか。
この精密な機器は「誰が」買うの??
という点です。
決算説明会資料を確認してみましょう。
まず、市場規模についてです。
半導体製造装置の市場規模ですが、実は「韓国」「台湾」「中国」そして「日本」と東アジアが多くのシェアを獲得しております。
市場規模は7兆円を超える市場で、市場が拡大していることが分かります。
そしてこちらが、地域別売上高となります。
現在は特に、台湾への売上が最も影響が高い状態となっております。
台湾以外の東アジア及び米国の売上もしっかり売上を上げているため、一国集中というわけではなく、ある程度バランス良く半導体装置の価値が認められるものと考えることができます。
このように、全世界に向けて積極的に売上を作っていける構造になっているため、今後も各国の市場規模の拡大によって売上がさらに積みあがることも期待できるかと思います。
※例えば1国だけの売上が大半を占めている場合、各国の政治や情勢に売上が影響されることを懸念される場合があります。
注目の次の決算は?業績予想修正くるか!?
レーザーテックは6月が決算期となるため、8月に通期決算発表があります。
ではどのように次の決算を考えていけばよいでしょうか。
ヒントは決算の貸借対照表(BS)にあります。
この貸借対照表の「負債・純資産の部」において、次の売上を予想できるヒントがあります。
何か分かりますでしょうか。
ヒント:負債に計上されている金額の大きい科目です。
正解は、、、、
「前受金」です。
会計を学んでない方は前受金とはなんぞ?となる方もいらっしゃると思います。
「前受金」とは
販売する商品代金の一部または全部を前もって受け取った時に使用する勘定科目です。
つまり、何かというと、
これから「売上」になることがほぼ確定している金額となっております。
(正確には短期負債のため、1年以内に売上に計上される金額です。)
つまり、「2021年3月末時点で350億円の将来の売上が積みあがっていますよ。」ということです。
予測するために過去の3ヶ月間の売上とその時に計上されている前受金をまとめてみました。
一番右の表は、前受金が次3ヶ月で何%売上に振り替わったのか。
を計算してみました。
すると、、、
レーザーテック社として2021年6月決算期が、売上620億円の予想ということで、直近1年で一番低い売上となる消極的な予測になっております。
もし、着地予想通り売上620億円となる場合、2021年3月期の前受金が28%しか消化できないことになります。
これはここ2年間の中で最も低い比率になります。
さすがにこの場合、前受金がさらに積み上がるため、あまりいい傾向と言えないため、過去から見ても約40~50%ほどが少なくとも売上に振り替わるのではないかと考えると。
2021年3月末
前受金 35,210千円 × 50%
=17,605千円(176億円)
2021年3月末までの売上
519億円 + 176億円
=695億円
前受金が50%振り替わると考えた場合、
売上が695億円になります。
そのため、もしこの通りいく場合は、業績予想の修正で売上の修正が入るかも!?
はい、というわけで
今回は、半導体という分野で盛り上がっている「レーザーテック」を決算資料にて、いろいろとみて参りました。
こちらのブログでは、このように決算資料から見て取れる面白いところをこれからも共有していきたいと思います。
※今回の決算予想についてあくまでも仮説の一つになっておりますので、鵜呑みにしないようご注意いただければ幸いです。