ここ1ヶ月で株価1.5倍!ラクスの注目点ってなんだ!?
投資を始めるなら、企業決算を決算資料を実務で作っていた経理の目線で見てみよう。
第4弾は「ラクス」
長く投資をされている方はもうご存知のことだと思いますが、
「楽々精算」という経費精算システムをメインで販売している会社です。
ラクス
(2021年7月6日現在)
創業 2000年
資本金 3億78百万円
時価総額 6,000億円(1ヶ月で1.5倍!)
さて、ラクスの決算を見ていく前に直近の株価を見て参りましょう!
ラクスの株価ですが、ここ1ヶ月でおよそ1.5倍になっています。
1ヶ月で1.5倍です!凄い伸びですね。
私はラクスが最近あまり伸びてないなーと思っていた矢先の伸びだったので、完全に出遅れてしまいました。
ただ、この伸びをどう見るか。
決算資料を噛み砕いていきましょう(ガブガブ)
成長速度が凄い!売上高は3年で2.59倍!
では早速、決算資料を見ていきましょう!
ご覧いただけましたでしょうか。
2019年3月期の決算以降、毎年30%を超える連結売上高の増加です。
※「連結」とは、ラクス1社だけではなく、ラクスのグループ(連結子会社3社)を合わせた複数社合算の売上という意味です。
これは、売れていますね
また、特徴的な数値として、売上が上がるほど、減価率が下がっています。
これについては後ほど紐解いていきましょう。
ラクスのメイン事業は「クラウド事業」という名称で以下のようなサービスがあります。
こちら、見ていただくと分かるのですが、
全てのサービスが軒並み上昇しているのです。
その上、次の表をご覧ください。
こちら、「LTV(ライフタイムバリュー)」と言って、1度契約した顧客がどのくらいのお金を使ってくれるか。という指標です。
「楽々精算」はメインのサービスですが、「楽々明細」がなんと前期の倍の数値を叩き出しています。これは、
1社契約ごとに将来的に2,000万円の売上を獲得したという状況です。
iPhoneに例えるなら、1回の契約で
iPhone12(1台10万想定)を200台販売することに匹敵します。
うまい棒ですと、200万本です。
どのくらい契約者数が伸びているかというと、
「楽々精算」の導入社数がどんどん増えていますね。
「楽々明細」の登録者数がさらに1年で2倍!
1年で前年比の件数を新規で取れるサービスに成長しています。
これは、「楽々精算」を導入している企業が、利便性を感じることに伴って、さらに「楽々明細」も導入しよう。という動きになってきたような気がします。
今はラクスの社内もかなりイケイケなムードが漂っているのではないでしょうか。
月額チャリンチャリン!ストック型ビジネスの強み
では、この伸びている「楽々精算」とは何が凄いのか考えてみましょう。
まず全ての会社において、役員・社員が支払う費用があります。
これらの作業をできる限り電子化して簡潔にしようというサービスになります。
会社によってルールは様々だと思いますが、
会社員の皆様、「経費精算」が
めんどくさいと思ったことありませんか。
営業先への交通費、
社内の懇親会の費用、
取引先との飲み会、
業務に必要な資料の購入、
これを会社指定のExcelシートに内容と金額をポチポチ入れて、ようやく入力し終えた〜。と思って印刷して領収書を紙に貼ったり、ホッチキスで止めて、押印して上司に提出後、経理から合計金額間違っている指摘され、見てみるとExcelシートの式が壊れていたり、入力の数字が間違えていた。
そして訂正印押して、再度上司に提出して、上司から「またかよ〜。ちゃんとやれよ。」とか言われる。
こんな経験ありませんか。
私は経理でしたので、よく間違える営業さんとか、まさにこんな感じで面倒くさいがっていました。
経理では、大量の経費精算書を目視しながら、役員の数ある交際費や細かい交通費の確認などしながら電卓を高速で叩いて計算して間違いないことを確認し、会計システムへ仕訳の入力を手入力していました。
こういった作業が「楽々精算」を導入するとどうなるのか。以下の図をご覧ください。
「楽々精算」を導入すると、Excelシートがなくなり、システム化され、紙の提出も不要になります。領収書はここ数年の法改正で、スマートフォンの画像でも対応できるようになってきました。
何が起きるかというと、手作業がかなり削減されて、シンプルになります。
つまり、私が先ほど赤字で書いた作業が全部なくなります。
これ、社員さんにとっても、経理にとっても、すごく楽な状態になりませんか。
面倒な作業の時間がなくなり、より本業に取り組める時間が作れるようになります。
これが「楽々精算」の強みです。
当然、他にも同様のサービスがあります。なお、私も経費精算のシステム導入をしたのですが、「楽々精算」と「Concur」のどちらを入れるかの選択になりました。
当時ラクスはまだ大きくなかったため、信用に欠ける可能性があるため、世界で使用されている「Concur」を導入することになりました。
しかし、当時も「楽々精算」は日本人から見ると直感的に使いやすかったため、最終選考まで残りました。
こちらをご覧いただくと分かるように、まだまだ市場規模がありそうです。
そして、もっとも忘れてはならないのが、
一度 導入したら、システムの変更がない限り使い続ける というサービスです。会計システムへの連携などもあるため、導入に当たっては様々なマスタ整備などが必要になるため、導入は大変です。
ただし導入後は、他の似たようなサービスに簡単に移行できなくなります。
つまり 解約率が異常に低いビジネスモデル ということです。
(経理としても一度導入した後に、システム切り替えるぞ!とかなったら、いやです。)
このビジネスモデルにはもう一つ特徴があります。
こちらをご覧ください。
システムを使っているため、会社数が増えれば増えるほど、
売上が上がれば上がるほど
原価も下がっていくのです
これがこのストック型ビジネスの真髄です。
導入社数が増えても、使えるサービスは同じなので、増える費用はサーバーのデータ量になります。
数字で説明すると以下のようなイメージです。
①開発費が毎月5億
(正確にはソフトウェア償却費と人件費など)
②導入社が1社増えるごとにサーバー代10万円追加
③1社導入すると100万円の売上
その場合、
導入社数が1,000社と7,000社を比べてみましょう。
<導入社数1,000社>
売上 100万 ✖️ 1,000= 10億
開発費 5億
サーバー代 10万✖️1,000= 1億
ーーーーーーーーーーーーーーーー
利益 4億
減価率 60%
利益率 40%
<導入社数7,000社>
売上 100万 ✖️ 7,000= 70億
開発費 5億
サーバー代 10万✖️7,000= 7億
ーーーーーーーーーーーーーーーー
利益 58億
減価率 18%
利益率 82%
お分かりいただけましたでしょうか。
このように、導入すればするほど、売上が上がり、減価率が減少、利益がどんどん積み増していくということです。
なかなか減りづらい「ストック売上」を決算でもしっかり説明しています。
美味しいビジネスモデルですね。
コンセンサスは厳しい??6月の四半期決算、通期決算はどうなる?
それでは、決算の進捗を参考に売上の推移予想をしてみましょう。
クラウド事業の6月決算予測
クラウド事業売上 | 実績値 | 実績値 | 実績値 | 予測値 | 予測値 |
年月 | 19年3月 | 20年3月 | 21年3月 | 21年6月 | 22年3月 |
売上高(百万円) | 6,725 | 8,952 | 12,298 | 13,220 | 15,987 |
成長率 | 142% | 133% | 137% | 108% | 130% |
上の表はクラウド事業の売上予測です。
年次で130%成長をしているため、少なくとも売上は150億円を超える水準になろうかと思います。
ただし、「楽々明細」の導入がすごい勢いになっているため、その場合はもっと売上が上がるかもしれません。
このクラウド事業に加えて、
人材事業も成長しており、35億円〜40億円程度の規模になるような成長ですね。
ラクスの2021年6月期
売上は130%の維持ができる水準かチェック!
ラクスの2022年3月期(年度末決算)
売上 185億円
クラウド事業 150億円
IT人材事業 35億円
営業利益率 約30%
営業利益 55億
以上のような想定ができそうです。
ただし、2022年3月期以降4年間は「成長投資強化」に使用するということですので、上記営業利益からどんどん投資に回して、利益があまり出ないかもしれません。
上記の通り、すでにコンセンサスでは売上は私の予想以上の期待感がある状況です。
そのため、8月に発表があると思われる第1四半期、非常に注目ですね!
はい。ということで、
今回は「ラクス」を取り上げてみました。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
今後も気になった企業の分析をしていきますので、お気に入りやSNSのシェアなどしていただけるとうれしいです。
※将来の決算についてあくまでも仮説の一つになっておりますので、鵜呑みにしないようご注意いただければ幸いです。